パソコンのRPGが普及する以前は、RPGといえばもちろんテーブルトークのRPGが主流だった。RPGの元祖は1971年に発表された「Chainmail」と呼ばれるウォーゲームで、1974年にそのサプリメントとしてリリースされたのが、みなさんもご存じの「Dungeons&Dragons」だった。そしてそれに追随するかのように、1974年には「Tunnels & Trolls」、1976年には「Traveller」、1978「Rune Quest」が登場することになる。そしてパソコンでは1979年に「Akalabeth」(ウルティマシリーズの起源でタイトルにはultimaと出る)、1981年に「ウィザードリィ」が登場し、パソコンでもRPG文化が華開いていくことになる。
オープニングより。ヨーロッパを感じさせる美しい景色。当時はキレイだなと感心させられたものである。
筆者はパソコンのRPGに出会うまではテーブルトークRPGにどっぷりだった。友達、シナリオ、システムさえあれば一人のキャラクターをずっと使い続けられるシステムは非常に魅力的だった。そうしたこともあって、パソコンでRPGがプレイできるようになったときに、パソコンのRPGはテーブルトークRPGと違ってシナリオ間をキャラクターが渡り歩けないことが残念だった。そのシナリオ(ゲーム)が終わったら、そのキャラクターとはさようならというのは何だか切なかったのである。
当時のRPGでは定番(?)のキャラクターメイキング。能力にランダム性はないので、やっきになってロールする必要はない。
そういう意味では、日本ファルコムの「ソーサリアン」(1987年)、システムソフトの「ブルトン・レイ」(1990年)などは、一度作ったキャラクターがシナリオを渡り歩けるというシステムを搭載しており、テーブルトークRPGとパソコンのRPGが見事に融合したような印象を受けたものである。後に「ブルトン・レイ」にはシナリオエディターもリリースされ、遊ぶだけではなく作ることの楽しみも与えてくれたという点は、テーブルトークRPGファンだった筆者には感涙ものだった。
「ブルトン・レイ」は、システムソフトが「ティル・ナ・ノーグ」で培ったノウハウを盛り込んだRPG。ブルトン/ケルトの世界をベースに硬派なRPGが楽しめる。ゲームはトップビューとなっていて、画面のまで行くと画面が切り替わる。進行はターン性だがプログラムは軽く、それほどストレスにはならない。さらにカーソルキーで方向を指定すれば、自動で障害物を避けながらその方向に進むという機能もあり、プレイアビリティも良かった。
ゲームはトップビュー。動作が軽快なのでアクションゲーム感覚でプレイできるのは好感触だ。
敵との戦闘はエンカウンター方式ではなく、マップ上を徘徊するモンスターと戦う。密着してスペースキーを押すことで武器を振るって攻撃し、仲間は自分の意志で戦うようになっていたために、このあたりの要素から「ティル・ナ・ノーグ」の後継と称されることが多かったようだ。
自由度はそれほど高くはなく、シナリオ性を前面に押し出している。フラグが立たないとドアが開かないといったことも。
前述しているが、最大の特徴は複数のシナリオが収録されている点で、キャラクターのレベルに応じて、さまざまな物語に挑戦できるということ。シナリオは下記の7本が収録されている。
「魔道士デミトル」(行方不明になった領主の娘):レベル1
「時の回廊」(水彩の章):レベル5
「アシュレの森」(レルを探して):レベル10
「風の伝説」(一陣の風に愛をのせて):レベル10
「眠れる者の覚醒」(魔術師アランと眠れる者の戦い):レベル15
「英雄誕生」(与えられた試練):レベル15
「赤き妖精の話」(小エド公国捜査網):レベル15
シングルではなくパーティを組むこともできる。簡単な指示を出すことはできるが、仲間はAIによって自動的に戦う。
シナリオにはレベルもあり、キャラクターの成長に合わせてシナリオをプレイできるようになっている。7本ものゲームが楽しめる……というのは言い過ぎだが、愛着あるキャラクターが様々な冒険に参加できるというのは、非常に嬉しいところ。まるで各国を放浪する歴戦の英雄を想像して興奮したものだ。のちにシナリオ集が発売され、よりたくさんの冒険が楽しめたが、2006年12月現在ではEGGでは未発売。今後の対応が待たれるところ。できればシナリオエディターも発売して、コンテストを開催してくれれば……と考えるのは筆者だけだろうか? 今後の展開にも期待したい。テーブルトークRPGや「ティル・ナ・ノーグ」のファン、RPGのマイキャラに強い愛着を持つ人なら、オススメできる本作、ぜひとも触れてもらいたい。
敵キャラは同社の「ティル・ナ・ノーグ」や「エリュシオン」を彷彿させる。中央の白骨死体は近づくと襲いかかってくる!