ノヴェルウエア第二弾『Chatty』(1988)は、数々の海外小説を翻訳してきた鎌田三平氏が原作を手がけている。遠い未来、殺人犯に仕立て上げられた主人公は真犯人を探すために次元転移装置で別の世界に行き、様々な事件に巻き込まれることとなる。
複雑に絡み合う人間ドラマに似つかわしい音楽は、故・斎藤学氏の手によるもの。アダルトな雰囲気で展開するゲーム内容に相応しく、楽曲群はときに切なくシリアスに、ときに優しくジャジーに(そして何故かスタッフロールの曲だけは実にイケイケな当時らしいゲームミュージック路線に)舵を切る。ドラマチックでありつつもBGMとしての抑制も効かせた後期・斎藤学サウンドの、実質的な原点とよべるのが本作だろう。
今回の初アルバム化にあたっては、ノーマルFM音源版とサウンドボードII版をともに収録。アコースティックな風情を醸し出しつつも乾いた味わいの前者、リズム面でのメリハリが効いた歯切れよい味わいの後者、それぞれに十分な聴き応えとなっている。
※なお実際のゲーム中では演奏が不完全に終わってしまう「エンディング [愛の逃亡者]」を、今回ソフトウェアシンセサイズにより再構成し、本来あるべき姿に修復。これを【OPNリストア版】として特別収録しております。