『幻影都市』(1991)は、マイクロキャビンが『Xak』関連以外で久々に放ったオリジナル大作であり、その独特なシステムと世界設定で当時話題を呼んだ。
音楽担当はマイクロキャビン・サウンドチームの要である新田忠弘と、『Xak ガゼルの塔』で頭角を顕した福田康文&瓜田幸治らの三名だ。『幻影都市』はまずMSX版が先行発売されており、そこには彼らの持てる力すべてを投入したかのごとき、圧倒的なクオリティのFM音源サウンドが凝縮されていた。このMSX版はかつて一度CD化されているが、PC-9801版のリリースは今回が初めてのこととなる。
PC-9801版はMSX版に比べると確かに重厚さを欠くが、それでも音源チップの特性を考慮してすっきり手際よくまとめられており、こちらはこちらで別種の魅力が備わっているといえる。三者三様のオリエンタル・サイバーパンクが、OPNチップならではの引き締まった音で響くさまも、ひとつの味わいだろう。
なお過去のCDでは一部しか収録されなかったMIDI版(こちらはMSXもPC-9801も同じで、MT-32という音源を使用)も、今回の配信ではじめて完全収録となった。FM音源版の完成度が高すぎるので忘れられがちな存在ではあるが、こちらもあわせてお楽しみいただければ幸いだ。
※FM音源版の録音にはスピークボードを使用しております。