絵本のような美しい世界観と、こころくすぐる遊び心
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1985年と言えばアクションRPGが定着し始めた時期で、T&Eソフトの「ハイドライドII」、日本ファルコムの「ザナドゥ」といったビッグタイトルの他、「トリトーン」「ザ・スクリーマー」「英雄ヤマトタケル」「未来」といった意欲作が多数登場したように覚えている。翌年には「カレイジアス・ペルセウス」なんてタイトルもリリースされて好評を博したのは懐かしい思い出だ。
ビジュアルシーン。呪いをかけられた王子が気が付くと知らない土地に……。
当時リリースされたタイトルの多くが中世ヨーロッパの剣と魔法の世界かSFをベースにしたものが多かったが、そうしたの中で異彩を放っていたのが1985年8月にシステムサコムからリリースされた「メルヘンヴェール」だった。まるで絵本のような美しい世界観は多くのプレイヤーをとりこにし、、ゲーム業界のパロディなども盛り込まれていたことから一躍有名に。ところが見た目の可愛さとは裏腹に、高い難易度の前に四苦八苦したプレイヤーも多かった。また「I」と付いていることからも分かるように、続編をリリースすることを前提に作られていたのも実に画期的だったように覚えている(残念ながら続編はPC-9801のみでのリリースだった)。今回は「メルヘンヴェールI」の面白さについて紹介していこう。
アクションシーン。どこかで見たような敵が(笑)。岩などを破壊してアイテムゲット。
「メルヘンヴェールI」は、魔女の呪いによってモンスターに変えられてしまった王子の冒険を描いたモノとなっている。当時のアクションRPGの中では個性的な世界観とストーリーを重視した作品として話題の作品で、ステージとステージの間には(当時としては)凝ったビジュアルシーンが設けられ、そこではちょっとしたストーリーが楽しめるという仕組みだった。開発者が「アクションシーンはビジュアルシーンのつなぎといってもいいかもしれない」とコメントしたほど物語性にこだわっていたことはレトロゲームファンの間では広く知られるところである。ちなみにシナリオ重視といっても、アクションシーンもちゃんと楽しめるものになっているので、これから遊んでみようという人も安心してもらいたい。
足を踏み外して崖から落ちそうになたらキー連打で復活。連打が遅いとゲームオーバーに。
これは月の女神ルナ。ルナの下にあるアイテムがあれば、とある場所に入れるようになる。
プレイヤーはテンキーによって王子を操作し、スペースキーで魔法弾を発射して戦う。ゲームとしての難易度は高めで、王子の移動速度は非常に遅く、マップ上に配置されている回復アイテム数も少ないうえに、敵は無限にポップ、さらにはゲームをセーブするには特定の場所でフロッピーディスク(アイテム)を使うのだが、フロッピーディスクは消耗品で常に一枚しか持てないという制限付き。これだけでもなかなかに手応えがありそうなことが分かるだろう。
各マップの水たまりでENDキーを押せばキャンプできる。アイテムなどを確認しよう。
ほかにも「メルヘンヴェールI」は開発者の遊び心が満載で、よくよく見ると「ドルアーガの塔」や「テグザー」のパロディ要素が入っており、マニアにはにやりとできる要素も多かった。
各マップにはボスのようなキャラクターも。入り組んだ地形で戦うのは難しいぞ。
高い難易度、雰囲気満点のビジュアルシーン、開発者の遊び心とマニア心をくすぐる本作。アクションRPG黎明期に名を残した秀作だけに一見の価値アリ。アクションRPGを語るなら一度は触れておくべきタイトルといえそうだ。物語は「I」では完結せず、「II」へと繋がっていくのだが、「II」ついてはまた別の機会に紹介してみたいと思う。
ここで全ての敵を倒すとあるアイテムが出現。これからプレイする人は覚えておこう。