3Dの面白さを2Dで。ファルコムらしいRPGとは?
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国産のPCゲームファンにとっての日本ファルコムという会社は、常に話題を提供してきたメーカーであり、知らない者はいないといっても過言ではない。ここで日本ファルコムらしさについて考えてみたいと思う。筆者にとっての日本ファルコムのタイトルというと、“新システムを採用し、時にはダークでシリアスな世界観を持つタイトル”という印象が強い。これは古くから日本ファルコムを知る人にとっては共感してもらえる部分があるんじゃないだろうか。
オープニングより。ヨーロッパを感じさせる美しい景色。当時はキレイだなと感心させられたものである。
こうした路線の代表作というと、『ぱのらま島』(1983年)を初め、『デーモンズリング』(1984年)、『ドラゴンスレイヤー』(1984年)、『ザナドゥ』(1985年)、『ダイアナソア』(1990年)、『ブランディッシュ』(1991年)といったところが思い浮かぶ。そうした一方で『イース』や『英雄伝説』を皮切りに、『ツヴァイ』『ぐるみん』などの“誰もが遊べて、明るく楽しい健全路線”などもあるが、今回は前述した路線にスポットを当て、その中の後継作ともいえる『ブランディッシュ』の魅力を紹介してみたいと思う。
『ブランディッシュ』が登場したのが1991年のことだ。時代的にはゲームシーンの主力PCがPC-8801からPC-9801への過渡期であり、『ブランディッシュ』の発売の報を受け、ついにファルコムもPC-9801専用のタイトルを出すのだなと感慨深く思った記憶がある。また続報として操作はフルマウスオペレーションになることや、主人公は怪物退治とかお姫様救出の冒険に出るのではなく、塔から脱出するRPGだと聞いて、日本ファルコムらしい意欲作だなと心を躍らせたものである。
当時のRPGでは定番(?)のキャラクターメイキング。能力にランダム性はないので、やっきになってロールする必要はない。
本作の概要もざっくり紹介しておこう。『ブランディッシュ』は、流浪の剣士アレスの冒険を描いたアクションRPG。あるとき、女魔道士ドーラと戦ったアレスだったが、彼女の放った魔法の爆発に巻き込まれて地下へと落下してしまう。アレスが目が覚ますとそこには塔が……。そしてアレスは地上へ戻るために塔を登ることになるというものだ。なお、スクリーンショットを見てもらえば一目瞭然だが、ゲームはトップビューで直感的に状況を把握できるものの、実は操作方法にやや癖があった。詳しくは後述するが、これこそが『ブランディッシュ』の魅力となっていたように思う。
『ブランディッシュ』の第一報がもたらされ、スクリーンショットを見ていただけの頃は、きっと上にキーを入れれば上に、右にキーを入れれば右を向いて歩くに違いない……と思っていた。ところが、実際に触れた『ブランディッシュ』は、想像していたものと異なっていたのだ。前進や後退、カニ歩き(向きを固定したまま右や左への移動)は予想通りだったが、なんと右や左を押すことで自分ではなく、マップそのものがグルッと回るのだ。つまりこのゲームにおける前進は、常に画面の上に向かって行うものだったのである。
一見なにもなさそうだけれど……。
正直、筆者はこの操作に戸惑った。なんで普通のアクションRPGのようにしなかったのだろうと疑問に思ったり、遊びづらいと不満に思ったりしたものだ。ところが遊び続けることで、すぐに操作にも慣れたし、このシステムの利点もわかってきたのである。
キャラクターではなくマップが回転するメリット、それは設置されたオブジェクトなどを様々な角度から見られるということ。例えば単なる通路かと思っていたものの、実は壁の方を向いたらレバーがあったなんてこともざらで、本作ではそうした視点のトリックを利用した罠や仕掛けが多数盛り込まれているのだ。また開いていない扉の向こう側は見えない演出もあり、扉をあけるまでは向こうで何が待ち構えているかわからない緊張感も味わえた。
壁を向いたらレバーが!
よくよく考えると、こうした表現方法は3DのRPGに見られる手法だ。おそらく『ブランディッシュ』の作者は、3D RPGで体験できる冒険者ならではの視点の面白さを、どうしたら2D RPGで表現できるのかを試行錯誤した結果、こうしたシステムにたどり着いたに違いない。
結果として『ブランディッシュ』は見事にヒットとなり、後に『2』『3』『VT/4』といった続編もリリースされることとなった。おそらくこうしたヒットの要因の一つに、これまでに話してきたことが少なからずとも関わっていると思う。また、また日本ファルコムにとってPC-9801最後のRPGとなったのが、『ブランディッシュVT』だったことは、PC-9801ユーザーにとっては感慨深く、同社の『ブランディッシュ』対する思いが伝わってくるようにも思えてならない。
マウスボタンを連打して敵を倒せ!
今回久々に本作を遊んでみたものの、(少々リハビリは必要だが)また遊んでみてもいいかなと思えた。また先日、PSP版などもリリースされたこともファンには嬉しいニュースだろう。時間があれば、そちらもチェック&紹介してみたいと思う。