思ひ出小箱

スタークルーザー

いざ、宇宙へ飛び出せ――!

スタークルーザー
発売年:
1988年
メーカー:
アルシスソフトウェア
機種:
PC-8801
ジャンル:
アクション,ロールプレイング
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1988年の衝撃

筆者は、技術であれ、アイディアであれ、何か新しいことにチャレンジしているゲームは大好きだ。そして、そんなタイトルが多いからこそPCゲームが大好きなのである。PCで新しい手法やアイディアが生まれ、それがコンシューマーに伝わって発展する……これは今も昔も変わらないことである。

  • ゲームは常時一人称視点。90度単位の旋回が主流だった時代に45度単位の滑らかな視点変更が可能だった点は多くのファンが感心したものだ。

さて今回はチャレンジ作ということで考えてみたい。この20年で大きく発達した技術といえば3Dがある。といっても擬似3D表示ではなく、ちゃんとした3D技術を使ったタイトルの話。今でこそ3Dは普通になったが、レトロゲームファンにとって3Dというキーワードには様々な思い出があるだろう。

筆者が3Dと聞いてまず思い出すのは、1984年にキャリーラボから登場した『ジェルダ』。こちらはワイヤーフレームによって3D表現がされたアクションゲームで、ひと言でいうなら3D版『ゼビウス』。当時中学生だった筆者は、ワイヤーフレームという技術が、どんなものかは理解していなかったが、線だけでも3D世界を構築できるんだな、と感心したものである。

  • 戦闘はリアルタイムで、シューティングゲーム感覚。バリアーがあるとはいえ、のんびりしているとあっという間にゲームオーバーになるので注意。

それから3Dを語るという意味では1986年は実に当たり年で、機体描画にポリゴンを採用したゲームアーツの『シルフィード』、ダンジョンでの探索時のみだが、3Dでなめらかな飛行が楽しめたアルシスソフトの『ウィバーン』、高速レースが楽しめたシステムサコムの『ハイウェイスター』などが登場。これらは遊んだことはなくとも、その名前くらいは知っている人もいるんじゃないだろうか。

それから2年後の1988年。『ウィバーン』を製作したアルシスソフトから『スタークルーザー』が発売された。これが実に3Dを感じさせてくれるタイトルで、レトロゲームファンの中でも名作との呼び声が高い。少々前置きが長くなってしまったが、今回は『スタークルーザー』を取り上げ、その魅力を紹介してみよう。

  • 右上に“航法系破壊”の文字が。どうやらダメージを受けすぎて機体の一部が破損してしまったらしい。こういうときは逃げてしまおう。

手に汗握る攻防戦

A級ハンター(賞金稼ぎ)であるブライアン・ライトは、単身で犯罪組織“太陽風”の基地へと潜入したが、激しい戦いで自機のスターシップが破壊されてしまい、残されたのはランドクルーザーのみとなってしまった。果たしてこの局面をどう突破するのだろうか……。本作はこんな感じでスタートする。画面を見てもらえば分かるように、ゲームは一人称視点なのだが、当時の一人称視点のゲームのほとんどが、移動は前進/後退/左旋回/右旋回といった具合で90度単位でしか周囲を見回せなかった。が、本作ではなんと旋回が45度単位で可能だったため、より空間を感じることができたのである。そして移動シーンが3Dなら戦闘も3D。探索中に敵にエンカウントするとリアルタイムのバトルに突入。敵とのバトルでは機体などを操作してレーザーなどで攻撃し合うことになり、ちょっとしたアクションゲームが楽しめる。今の技術で考えれば敵のAIに物足りないが、当時はCPUが操作する敵との戦いは手に汗握る緊張感を味わったものである。さらに(当時としては)スクロールや機体の動きも実に滑らかで、当時のPCゲームにおける最新の3D技術が体験できるといって過言ではないだろう。

  • 宇宙空間に出るとZ軸の概念などもあり、縦横無尽に宇宙空間を楽しめる。遠くから攻撃してくる敵を交わしつつ宇宙を探索しよう。

  • ゲーム中の会話シーンも、ちょっと洒落がきいていたりする。美形の兄ちゃんが戦うナンパなゲームとは一線を画する雰囲気は○!

また個人的には様々な演出もツボだった。戦闘でダメージを受けても、いきなり破壊とはならず、燃料系や武器系などが個別に壊れていくなどの演出はSFっぽかったし、太陽風、紅蓮のサソリ、魔白狼といったネーミングセンスは、まるで翻訳されたSF文庫のよう。さらに主人公であるブライアンや、登場人物の一人であるギブスンの台詞も男くさくていい。シナリオについてはネタバレになるのでここでは詳細は書かないが、とにかくテンポが良くちゃんと練られたものになっていたと思う。前述したような要素を見る限り、作者自身がSFに精通していることが伺えたのは非常に好感触だった。個人的にはSFの定番ともいえる環状惑星なども出てくると、より嬉しかったが、まあそこは好みの話なので(苦笑)。そうそう、サウンドに関しては筆者は門外漢ではあるものの、小気味良いリズムはBGMはゲームの雰囲気にマッチしていたように思う。百聞は一見にしかずではないけれど、EGG MUSICで試聴可能なので是非体験してもらいたい。

ともかく1988年における最新の3D描画と、正統派なSFテイストを見事に盛り込んだ本作は、コテコテのSFファンなら一度は触れて欲しいと思う作品だ。今見るとさすがにポリゴンなどもショボイが、逆にそれがSFっぽくて渋いと思うのは筆者だけだろうか。みなさんはどうですか?

  • まだ素材の取れていない~など、雰囲気を伝える表現も多彩。SF好きに高く評価されたゲームだということは、こういうところからも伺える。