思ひ出小箱

関ヶ原

精神的な部分の駆け引きで人間臭い戦国時代を体験

関ヶ原

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発売年:
1991年
メーカー:
アートディンク
機種:
PC-9801
ジャンル:
シミュレーション
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意外と少ない戦国ゲーム

戦国時代をテーマにしたゲームというと、1983年に光栄マイコンシステム(現コーエー)からリリースされた「信長の野望」、1989年にシステムソフトからリリースされた「天下統一」あたりが有名で、他にもウルフチームの「斬」、GE・TENチームの「GE・TEN」、アートディンクの「関ヶ原」といったタイトルがあったように記憶している。キワモノとしてゲームアーツの「HARAKIRI」なんてのもあった。「信長の野望」と「天下統一」については現在も続編がリリースされているが、他の戦国ゲームは皆無といった状態で、その手のファンには少々残念な状況となっている。もうちょっと選択肢の幅は欲しいモノである。

  • オープニングは大河ドラマのよう。これだけでしびれるというモノです。

数々の戦国時代モノをプレイしてきたが、そうした中で思い出深かったタイトルがアートディンクの「関ヶ原」。戦国時代モノの駆け引きというと、用兵術を競うモノが多いが、本作では精神的な部分の駆け引きが重要となっている点が面白い。もちろん用兵術も楽しめるが、大半は根回し工作だったり、大名としてのパフォーマンスだったりと、これまでの戦国時代をテーマにしたゲームとは異なるアプローチを見せていた。どこか人間臭い戦国時代が体験できたことはとても新鮮で、また難易度が高かったことも、筆者の攻略心がすぐられた要素だった。

  • 東軍か西軍かを選んでプレイ。自勢力の勝利を目指して熾烈な戦いが始まる。

権謀術数と関ヶ原

本作の最大の魅力は「関ヶ原の合戦」を上手く再現していることだろう。「関ヶ原の合戦」というと局地戦とのイメージが強いが、実はそうではない。徳川家康と石田三成によって日本中の大名に書状が送られ、日本全土を覆う根回し合戦が行われ、決戦となった場所が関ヶ原というだけなのだ。関ヶ原に直接参戦できなかった大名達もいたが、彼らは彼らで味方のために街道封鎖や攪乱/牽制などが行っており、実際には日本全土を舞台にした戦いだったのだ。

  • 刻々と移り変わる勢力図。データを見る限りでは西軍が有利に見えるが……

そうしたこともあって本作では、前編後編の二部で構成されている。第一部は権謀術数編で、ここで関ヶ原を開始するまでの根回しを行う。懐柔、脅迫、説得などの書状を上手く使って大名たちの心を揺さぶり、いかに味方にするか? を敵方と競うことになる。目には見えない戦いが楽しめるというわけだ。特に数値や明確な状態が見られるわけでもなく、書状を書いてもセリフによる返事だけで、口約束っぽいところが実に生々しい。関ヶ原に到着してみて成果が分かるという仕組みなので、プレイヤーは疑心暗鬼に捕らわれつつも説得工作に奔走することになる。正直、ここでの行動が勝利へのカギとなっているので、手を抜くと第二部の合戦で苦労することになる。根回しは非常に重要だ。

  • 書状を送って脅迫や懐柔を行う。同じ相手に何通も送ると気分を害してしまうことも。

第二部は関ヶ原の合戦編で、こちらは実際に兵を動かして戦う。前編の結果が大きく反映されるので、関ヶ原に到着したときはドキドキもの。頼みの綱である○×は味方か? 敵か? などとついつい画面に見入ってしまうことだろう。ちなみにいきなり第二部から開始することもでき、その場合は史実に近い布陣となっている。

  • 合戦開始。軍議では先鋒を決定する。先鋒は勇猛な武将に任せたい。

合戦編は今でいうところのRTSのような感じ。懸かれ、引け、弁当などを指示するだけで、あまり細かい動きまでは指示できず、徳川家康や石田三成も、こんなもどかしさを感じていたに違いない。ここでも間者を送って寝返りを促したり、時には空弁当を食べて余裕を見せることで皆に安心感を与えたり、さらには一発勝負で切腹を試みるなんてパフォーマンスも可能。切腹は誰かが止めてくれれば味方の士気が上がるが、誰も止めてくれないと死ぬ(ゲームオーバー)か、踏みとどまることになる。ただし踏みとどまった場合は、大幅に士気が下がるので注意が必要だ。まさに大博打である。

  • 史実通り、小早川は裏切ってしまうのか? 1万5000人の大兵力なだけに敵になれば脅威だ。

このように、人間臭さを上手く表現しているのが本作の大きな魅力。戦国シミュレーションゲームに新しい方向性を感じさせてくれたという意味では評価すべき点は多いと思う。また難易度はかなりのモノで、相当に気合いを入れてプレイしないと攻略は難しいだろう。実は筆者は数えるほどしか攻略した記憶がなかったりする(汗)。腕に覚えがあるならぜひともチャレンジしてほしい。論功行賞までたどり着いたときは感動を覚えるだろう。

  • 白く見えるのは霧。大名には伝令という形で指示を出す。やっかいなことに動かないこともある。

一般的な戦国時代モノとは少々異なるために取っつきにくさもあるし、今見ればインタフェースも洗練されてはいない部分もあるが、ツボにはまれば病みつきになる面白さがある。戦国ファンなら一度は触れてもらいたい。

  • 大博打の切腹。止めてくれるモノがいないと悲惨な結果になる。