実のところ80年代のPCゲームは、アクションゲームとの戦いだったといってもいい。当時はPC-8801シリーズやFM-7といった機種が全盛期だったが、それらはアクションゲームを作るには向いていなかった。それでも熱意ある開発者達はアクションゲームを作り続け、優れたアクションゲームを開発できたメーカーは、技術力のあるメーカーとして多くのファンを獲得した。当時、アクションゲームとは最も技術力が必要なタイトルだったわけである。
オープニングのシルフィードの紹介シーン。3Dを感じさせる。
そうした歴史の中で、1986年12月5日にゲームアーツからリリースされた「シルフィード」(PC-8801mkIISR版)は、最高峰のアクションゲームとの賛辞を浴びることになった。日本初のポリゴンシューティングであり、PC-8801mkIISRでは初めてのCSMモードによって合成音声を実現、FM音源3声&PSG3声を利用したBGMなど、当時としては最高峰の技術を駆使した内容。その人気は非常に長く、1988年3月19日にはFM77AV版のリリースに至る。
ゲーム開始時に登場する帝王ザカリテ。なんと言っているかで友人と論争になった記憶も(笑)。
本作は残念ながら2機種のみのリリースになってしまったが、おそらくレトロゲームファンであれば遊んだことはなくても、その名前くらいは知っていなければモグリというものだ。他にも同社は「テグザー」「ヴェイグス」などのSFをテーマにしたアクションゲームをリリースしており、技術力のあるメーカーとして幅広く認知された。そしてこれらに熱中したプレイヤーがやがてプログラマーになり、影響を受けたと思われるタイトルも多い。ちなみに本作の最新版は2000年9月21日に「SILPHEED THE LOST PLANET」(PS2版)というタイトルでリリースされている。
宇宙空間だけではなく、様々な場所を舞台に激しい戦いが行われる。写真は惑星軌道上での戦い。
さっそく本作の内容や見所について紹介していこう。本作は3D縦スクロールシューティングゲームで、戦闘機シルフィードを駆って宇宙の帝王ザカリテとその軍勢に挑むことになる。オープニングでは合成音声で「私は宇宙の帝王ザカリテ。グロアールある限り貴様らごときに倒されはせん」と喋り、さらにゲームオーバーの際にもザカリテの声で簡単な評価が聞ける。ほかにもゲームの要所で音声合成が聞けるようになっていた。当時これは大きな話題となった。
要塞内部での戦闘。閉鎖された空間での戦いは少々手こずることも。左右の壁に激突することはない。
ゲームはステージ制で、プレイヤーはシルフィードを操作して宇宙空間、敵要塞内、惑星上などを舞台に戦い、ステージ上の隕石などを破壊して登場する、耐久力回復、アステロイドベルト(防御壁)、スピードアップなどのアイテムを取ることで自機がパワーアップする仕組み。さらにステージ最後に登場するのボスキャラを倒せばステージ終了となる。ステージが終了するとシルフィードはステーションに帰投し、スコアに応じて武器が手に入る。より多くの武器を手に入れるためにもスコアは大事で、敵をいかに効率よく倒すかが重要になってくるほか、耐久力がマックスのたままで耐久力の回復アイテムを取ればボーナスが入るなどの要素や、無敵状態では体当たりで敵を倒すと高得点といった要素もあるので、やり込み度は結構高いと言えるだろう。
ステージの最後に登場するボス。ミサイルやワイドビームを飛ばすモノなど多種多様なタイプがいる。
スコアを稼ぐことで様々な武器が使用可能になる。得点稼ぎも非常に重要でやり込み度も抜群!
登場する武器は「FORWARD DEAM」「PHALANX BEAM」「V BEAM」「LASER」「HOMING」の5種類で、武器の換装はステーションでしか行えない。だから攻略には何度もプレイして各ステージの特性を知り、ステージ毎に自分のセッティングを考えるという楽しみもあるわけだ。なおゲーム中には「LASER」を反射するボスなどもいるのだが、かつて筆者はカッコイイからという理由だけで「LASER」だけを選んで出撃し、泣きを見た経験もあったりする(苦笑)。ちなみにシルフィードには左右に一種類ずつの武器を装備可能となっている。左右違う武器を装備する方が様々な局面に対応できるので、武器のチョイスに迷ったらとりあえず違うものを装備することをオススメしたい。
ステージとステージの間にはアイキャッチも。ここでU、S、Aのキーをと押すと隠しキャラで兎が登場。
久々にプレイしてみたが、ゲームとしてのソースでいえば今でも通用する面白さがある。この容量でこれだけ面白いモノが作られた時代には、心から敬意を払わなければならないだろう。今となっては画質は古くさいが、これを機会に黎明期のPCアクション/シューティングに触れてみてはいかがだろうか。そこで君は今のアクション/シューティングに繋がる“何か”を体験するに違いない。
要塞への突入シーン。こういったケレン味あふれる演出も本作の良いところである。