男の子にとって合体/変形メカは定番の人気要素である。敵と激しい戦いを行う主人公たち、そんなときに敵がなんらかの切り札を出し、それに対抗するために主人公らも合体/変形メカで応戦し、やはり最後には合体などを駆使した大技で敵を撃破する……こんなシーンを見て筆者は育ったわけだが、おそらく男子たるもの合体/変形メカと聞けば、どこか懐かしかったり、わくわくする部分を持っているに違いない。そうした要素はPCゲーム業界にもしばしば見られ、合体変形メカの人気はいつの時代も定番なのだなと思うことも多々ある。
とはいってもゲームの世界で合体変形をするといった要素を持ったものは非常に少ない。シューティングであれば「ムーンクレスタ」(1980年)、「テラクレスタ」(1985年)、「ツインビー」(二人プレイ時)くらいがパッと思いつくが、どれも合体攻撃であり、合体してロボットになるようなものはあまり見られない。
ひたすら避けてエネルギーを溜めろ! 100%になるまでの我慢!?
そうした中、シューティングとして1984年にデービーソフトからリリースされた「ヴォルガード」は、三機の戦闘機が合体してロボットになるというもので、当時の広告では合体シーンの写真がデカデカと掲載されて話題になった。“高機動可変システムヴォルガード!”のコピーには胸が躍り、これこそ求めるゲームじゃないか! と興奮したものだ。しかし、ゲームはかなり異色な内容で、一言で言うなら耐えて耐えて最後に合体して大暴れ! といった感じ。シューティングとしてはあまり爽快感が得られないという不思議な内容だが、後にファミコンへの移植などがあったことを考えると、それなりに人気はあったようだ。今回は「ヴォルガード」を取り上げ、その異色な内容に触れてみるとしよう。
ステージは全部で5つ。後半のステージになると敵の攻撃も激しくなる。
プレイヤーは戦闘機を操作して惑星トライダルの危機を救うというもので、8方向の移動と、対空、対地攻撃が行える。また時間の経過とともにエネルギーが蓄積され、一定の値になると二号機、三号機が登場してオプションのごとく付き従い、エネルギーが100%に到達すると合体してロボットになるのだ。だが、ここに大きな問題がある。それは合体のためのエネルギーは対空ビームのそれと共用なので、対空攻撃をし続ける限りいつまでたっても合体できないというわけ。つまり敵を攻撃しちゃいけないのである。避けて避けて避け続け、攻撃するのは必要最低限の敵だけ。ひたすら避けて合体を目指すのである。こうして念願の合体となる。
エネルギーを溜めて味方が増えると対空攻撃も強化される。
三機の戦闘機が揃い、エネルギーが100%になれば戦闘機が合体してロボットに! 当時はこの合体シーンにしびれたものだ。戦闘機状態では一撃でも被弾すれば破壊されていたが、合体すればエネルギーのある限り敵の攻撃を受け止められる。実に頼もしい! と思いたいところだが、合体することで当たり判定は大きくなるし、これまた対空攻撃を行うとエネルギーが減るわけで、やはり必要以上に対空攻撃を行えない仕組み。なんてマゾイんだろう。これは余談だが、当時筆者はFM-7版をプレイしており、東京の池袋でパソコン系のイベントが開催されたことがあった。会場にはデービーソフトも出展しており、「ヴォルガード」を使ったハイスコアコンテストが行われていた。かなりやりこんでいたのでハイスコアを出すのは楽勝でステッカーか何かをゲットした記憶があるが、それとは別に合体直前のタイミングで対空攻撃を行うと、空中に敵が出なくなり、あとは地上攻撃だけで永遠に得点が稼げるというバグ技を披露してスタッフの人たちに驚かれた記憶がある。EGGのFM-7版でも再現できるので、興味がある人は挑戦してみはどうだろう?
合体シーンその1。SYNCRETIZEのメッセージとともに上昇!
合体シーンその2。上半身、腕、下半身のパーツがドッキング!
合体シーンその3。三機が合体して念願のヴォルガード完成!
結局、ロボットになってもなるべく避けながら敵をやり過ごし、最後の戦艦と勝負することになる。当時は撃ちまくりのシューティングが全盛だっただけに、単に撃つだけのシューティングに仕上げなかったというチャレンジ精神は、多少なりとも評価してもいいのではないかと思う。ひょっとすると多くのプレイヤーは敵と戦うことではなく、合体変形を見るだけのために本作品に夢中になっていたのかもしれない。
巨大戦艦との戦いも熱かった。燃えている場所が戦艦の弱点。